アートセラピーサロン ま・れうれう 心理カウンセラー・絵画療法士 松谷桂子 連載コラム 第12回「心のケアとアートセラピーvol.2」

心のケアとアートセラピーvol.2

夏の夜空を見上げると満天の星空が美しく輝く季節となりました。
色とりどりの紫陽花が咲き始め、華やかで気持ちも身体もウキウキします。
季節の移り変わりがはっきりとしているからこそ、短い夏を満喫したいですよね。
アートセラピー&カウンセリングサロンま・れうれう主宰松谷桂子です。

今回は、心のケアとアートセラピーvol2
についてのお話しをしたいと思います。
子供達にアートセラピーを使って心のケアはどのように進むのかというと、とにかく、画材をいっぱい使ってダイナミックに遊ぶことをやっていきます。
ただし、私たちセラピストは、子ども達の心の様子によって、どんな画材を使い、どのように環境を設定していくかは、大変、注意深く、選んでいきます。
アートセラピーは画材の良さを最大限に引き出しながらおこなっていきます。
手や足を絵の具のなかにいれて、ボディペイントしてみたり、全身、小麦粉だらけになって小麦粉粘土を作るなんてこともあります。
一見、心のケアをしているようにはあまり見えないですが、素材が内側にある大きな感情のうねりや想いを受けとめ、全身を使って感情を発散していきます。
お腹から大きな声をだしてみたり、はたまた、静かに、静かに身体を丸めて、心臓の音を耳を澄ませて聴いていくようなときもあります。
それだけ、私たちが感じている感情は、常に揺れ、動き、鼓動し、激しくもあり、穏やかでもあるからです。
画材を使い、最小限の制限の中で、イメージを広げ、体感していくプロセスを味わいながら、アートワークの時間を過ごしていきます。
セラピストはそこではあくまでも見守る存在のため、指示、指導、アドバイスはしません。子ども達に全てをゆだねていきます。
この、ゆだねてることがなかなか難しいのです。ついつい、一言、いいたくなる!から。
危ないよとか、仲良くしなさいとか、多数決やじゃんけんできめたら?とか、みんなと一緒にやろうとか、もうね、子どもにいろんなことを言いたくって、言いたくって、心の中にモヤモヤが充満していきます。(笑)

頭の中が大人だから、子どもの心に寄り添いながら、プロセスを楽しめないこともしばしばおきます。
わたしはどれだけ、子どもたちにいろんなことを指示、指導していたのか?愕然としました。
そして、信頼し、待つことや今にいることが苦しいのなんのって。

イメージ

指示、指導を否定しているわけでありません。もちろん、適切な指導や指示、教育は大切なことです。
ただ、わたしの場合は、子どものダイナミックな力動を待てないがために、または、今、ここで起きているプロセスを信頼し、見守ることよりも、自分が安心できる結果を得たくって、場をコントロールしたいという欲求に負けて、子どもたちになにかしら言葉を投げかけていたから、辛いのです。
場で起きることを信頼する
子どものチカラを信頼する
絵のチカラを信頼する
アートセラピーワークをファシリテートする際に大切なことをたくさん、コーチから伝えてもらいました。
頭ではわかるのだけど、実際、自分が場を提供し、セラピストの立ち位置でいると、かなりの忍耐をためされていくのですが、そのことに耐えられなくなると、やっぱり、余計な一言が言いたくなるのです。
では、なぜ、心のケアにおいて、セラピストが場を信頼し、見守るというポジションが重要かといえば、その人の心の動きを尊重していくために、その人の心の動きがセラピストに反映しやすくすることが深い気づきをうむからなんです。
セラピストは、ちょっと、自分の価値感や感情を脇におくことが求められます。
そのことで、その人の持つ力や感情が沸き上がる瞬間を受け止めるためです。
子どもであっても、大人であっても、自分のパワーを取り戻すこと、自分の存在をみとめること、尊重することを繰り返し、体験することで、自己信頼をしていくためのプロセスだからです。
そのためには、たくさんの承認とシェアーが不可欠になります。
体験や体感に結びついた気づきは、その人らしさを引き出し、そして、次へ向かっていく勇気や自分を信頼していくプロセスの始まりです。
そこから、自分の人生の物語が展開していきます。
例え、辛いことや想定外の出来事があったとしても、よりよい方向を創造し、自分で選択し、決めていくことの大切さを感じる、そのことが自らやれる!ということを体感する場がアートワークです。
心の中の断片的なイメージを外へ向かって開き、表現していくことで、より、自分の本質があぶり出されていきます。
あなたは、どうしたいの?
あなたは、今、どんな状態が望ましいですの?
あなたは今、どんな感じ?
その感じは身体のどこにあるの?
どうしたいの?、なにしたいの?ではなく、
今、どんな気持ちなの?
どんな気持ちでいたいの?

それは、目標ややるべきこと、Doingではなく、在り方、Beingにフォーカスしていく為に投げかける質問です。
わたしの師匠は、子供でも、大人であっても、その人が決めることを尊重し、例え、その選択がどんな場合であっても受け入れ、決められることを信頼しないと、常々、話をしてました。
子供だから、経験してないから、アドバイスしてあげなくちゃ、辛い体験をさせないようにとか、いろいろと大人は考えるでしょう、その人の役に立たないと、自分が評価されたい、嫌われたくないとかあるから。 それは、当たり前の心の動きだから、それはそれなんだけどね。
でも、そんなふうにやってあげることで、子供たちが自分の力で越えていくことや、自分で考えること、体験することのチャンスやチャレンジする可能性を奪うこともあるということをわかってないとねと繰り返し、繰り返し、伝えてくれました。
だからこそ、わたしは、どんな絵にもたくさんの可能性があるという視点で受け止め、その人の可能性が開いていく為には、どんな投げかけがよいのだろうかいうことを少しでもお伝えすることができる機会があればと思います。
アートセラピーを通して心のケアは、決して、辛い、苦しい経験を呼び覚まし、そのことを超えさせるものではありません。
あなたの中にある強さ、しなやかさ、辛いことを包みこめる優しいさ、違うを受け止め、ユーモアに愉しむことができる内なる力を引き出していくことです。
そのことを信頼し、プロセスの中にいながら、生きていくことです。
わたしにとってのアートセラピーは、みえない可能性と希望、そして、人の強さ、優しいをともに発見し、その人らしい、ありのままの姿を見せてくれる大切なものです。


アートセラピーサロン ま・れうれう 心理カウンセラー・絵画療法士 松谷桂子
監修
アートセラピーサロン「ま・れうれう」
心理カウンセラー・絵画療法士 

松谷 桂子

学校・幼稚園での講演会や子供の絵画分析、企業向けカウンセリング講座、コミュニケーション向上研修会、リスナー教育などを行っている。メディア取材として、のりゆきのトークDE北海道の心理テスト「今日のア・タ・シ」の監修や、道新オントナにて心理テストの監修、ケイコとマナブ(情報誌・リクルート出版)の心理テストの監修など各メディアからの評価も高い。