サロン・ド・テーブルUmemoto 代表 梅本 光江 連載コラム 暮らしを彩るWatashiiro 第17回「初秋のたのしみ 日本の秋……」

初秋のたのしみ 日本の秋…

お盆が過ぎ空の色も雲の形も少しづつ静かに秋に移ろいはじめると、もう9月初秋。
今まで盛んに伸びていた夏草は勢いを減らし、野山や道端には秋桜や吾亦紅がそよ風に揺れ始めます。
このように美しい季節を私たち日本人は"花鳥風月"という言葉に置き換えて、日々の生活の中で器や着物、手紙や歌に取り入れて楽しんできました。
平安の昔から私たちが持つ五感全てを敏感に働かせ、本当の贅沢を体で感じてきたのだと思います。
そんな9月、季語にもなっている"花野"これは秋の草花が咲き乱れた様子で、生命力がある華やかな春の花とはまた違った少し侘びのあるような野山に咲く秋の花々たちを表す言葉だそうです。
例えばその中にある秋の七草…萩・桔梗・撫子・藤袴・尾花・葛・女郎花……
派手ではないけれど、楚々としてやさしい花たちです。
このような花たちが咲く"花野"。一種類だけが咲くというよりもいろいろな花が仲良く一緒に咲くという日本の美しい秋があるというのはとてもうれしいことですね。

そしてもう一つ、9月は日本を代表するお花"菊"の季節です。
菊は9月9日"重陽の節句"に欠かせないお花です。これは古代中国でいう縁起の良い陽の数字で、数が一番大きい9が二つ重なるという意味の重陽の日、強い香りがある菊に邪気を払う力があると言われ、祓いや長寿祈願としていたことが、平安の時代日本に伝えられたとされています。

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今でも、宮中行事とされていたり、菊花展や菊人形など、各地で品評会なども盛んにおこなわれ、ここ札幌でも毎年とても美しい大輪の菊などの品評会が大通りの地下街などで開催されています。

こんな風ににぎやかだった夏の後に訪れる初秋には、また格別の楽しみがあると思っています。暑さが和らぐ澄んだ空気を吸って野山に出かけて草花を見つけたり、もうすぐ訪れる重陽の節句には、菊の花を飾ったりまた菊の花びらをお酒に入れてほのかに香る菊酒を飲んだりと、日本の秋を楽しんでみてはいかがでしょうか。

思う存分初秋の花鳥風月を五感で楽しみましょう!!

サロン・ド・テーブルUmemoto 代表 梅本 光江
監修
サロン・ド・テーブルUmemoto
代表 

梅本 光江

学生の頃から花の美しさに魅せられ華道を学ぶ。
その後、ヨーロッパのフラワーアレンジメントやテーブルコーディネートに関心を持つようになり、インストラクターを取得。
現在、札幌で唯一のお花・お料理・テーブルセッティングを中心としたおもてなしとマナー教室、そしてプリザーブドフラワーの教室を開講。その他、ギフトやウエディングブーケ、ディスプレイなども手がけている。